韓国岳の山頂に立つ。
南東には、溶岩の溜まった新燃岳。
その後方には、両翼を畳んだ大鷲のような高千穂峰が鎮座する。
南南西の眼下には、雲間から放射される陽を受けて輝く大浪池。
その先には錦江湾に浮かぶ桜島、遙か彼方には開聞岳も見える。
韓国岳の眼下に広がる峰々は、神々しさに満ちていた。
周知のとおり、高千穂峰は、記紀神話の中で、葦原中国(あしはらのなかつくに)を治めるために、高天原(たかまがはら)から天孫瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が初めて地上に降り立った『天孫降臨』の比定地の一つとされる。
古事記の「筑紫の日向の高千穂の久志布流多気(くしふるたき)に天降りまさしめき」の記述によるものである。
「久士布流」は、「奇し振る」で、神秘的、不思議と言った意味である。
「多気」は「岳」で、霊妙な石が年月を経てなった山の意、あるいは「霊異ある」という意味である。
ちなみに、大分県玖珠郡九重町(ここのえまち)と竹田市久住町(くじゅうまち)の境界に位置する山々が九重連山(くじゅうれんざん)で、その一座に「久住山」がある。
「九重」あるいは「久住」も実は当て字で、「クシフ」「クシフル」が「クジュウ」へと訛化し、それに佳字が当てられたと考える研究者も多い。
付け加えると、活火山群の九重連山を構成する星生山(ほっしょうざん)東側の尾根筋にも霧島連山と同様に「硫黄山」と呼ばれる峰があり、常時噴気を上げている。
もう一つ言えば、作家の金達寿氏は、『 日本の中の朝鮮文化 』で久住にふれ、
南部朝鮮加耶の天降神話で知られる亀旨峰(くじぽん)の亀旨ということからきたものであると述べている。
朝鮮の亀旨神話も始祖・首露王の出生について、天から亀旨の峰に包みを下げた縄が下り、その中にあった卵が孵って生まれてきたと伝える。
天から国を治めるべき人物が下ってくるという天孫降臨の話は、アジア北方系の神話であるという。
金氏は、そのクジがクシ、クシヒ、さらにクジュウになったという。
この亀旨は、ほかにまた日本神話の久士布留、槵触(くしふる)ともなっているものであるが、久住山も含めた九重山群の九重も同じであると。
こうしたこともあって、九重連山を天孫降臨の地と考える人も …
少し長くなったので、この話はまた別の機会に。
11月20日、宿のえびの高原ホテルに車を駐め、えびの高原ミュージアムセンター前の登山口から出発。
空は快晴、まさに小春日より。
熱水・熱泥、火山ガスを噴き上げる硫黄山と不動池を見下ろしながら、ガレの多い急な道を登った。
メリノウールのベースレイヤーとポーラテックフリースの2枚重ね。
暑い … ウェアーの選択を誤ったかな…
山頂に着くと、気温は5℃。
しばらくすると雲が出始め、風速7~8mの風が吹き始めた。
体感温度は、0℃ほどか …
とんでもなく寒い… 慌ててレインウエアを羽織った。
20年ぶりの韓国岳山頂、初めて登ったのは40年前。
黒茶色した高千穂峰の雄姿は、昔とまったく変わっていなかった。
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