近年、頻繁に耳にし、目にするようになった『 ソウルフード 』という言葉。
これまで何度か、この言葉について書いてきた。
使われ始めたのは、2000年以降だと思う。
聞くたびに、やるせない思いが湧きあがってくる。
その理由は、
・ 無知な和製英語である
・ その料理の普及状況
この二つの点だ。
ー 無知な和製英語 ー
郷土料理を紹介するラジオで、この言葉を初めて聞いたとき、強い違和感を覚えた。
当時、日本の国語辞書にこの言葉はなかった。
無論、英和辞典、英英辞典で、現在、日本で使われているような意味は皆無だったし、今も同様だ。
そもそも、英語のソウルフードとは、簡単に言えば、アフリカ系アメリカ人の伝統料理の総称である。
理由を考えた。
2000年にB'zが発売したのが「 ultra soul 」(ウルトラ・ソウル)、大ヒットした曲だ。これを機に、「 ソウル 」という言葉が、国民に一気に広まっていく。
ご存じのとおり、英語「 ソウル 」の意味は、心、精神、魂、霊魂など。
で、そのソウルと食べ物(フード)をくっつけて、心に刻まれた、郷土料理のようなものってこと … ?
いくらなんでも、誤用じゃないの …
無知でいい加減なメディア関係者らしい言葉の使い方、そう思った。
ー その料理の普及状況 ー
私がこよなく愛する想夫恋の焼きそば。
これを ” 大分県民のソウルフード " と言う人がいる。
想夫恋は大分県の日田が発祥だ。
大分県内では9店舗を展開するが、その内の7店は日田だ。
残りは、大分市に1店舗、別府に1店舗だ。
2016年、秘密のケンミンSHOWで、横手と日田の焼きそば対決が放映された。
これを契機に、想夫恋を発祥とする「 日田焼きそば 」とそのパチモン焼きそばが全国に知れ渡った。
だからといって ” 大分県民の … ” はないだろう。
大分市在住の友人に、想夫恋焼きや模倣店の焼きそばのことを尋ねたところ、食べたことはあるとは言う。その程度だ。
ついでに言えば、「 ふきや 」のお好み焼きも同様だ。
” 福岡のソウルフード … ” と言う人がいる。
ふきやは、現在、福岡市内に8店舗を展開している。
かつてあった『 天神ショッパーズ店 』が昭和49年に開店して以来、ファンとなった個性的なお好み焼き、思いのある食べ物だ。
とはいえ、これもまた ” 福岡の … ” は言い過ぎだ。
福岡とは、福岡都市圏を言うのか、それとも福岡県なのか。
熱烈なファンはいてもローカル、食べたことがない方はごまんといらっしゃるに違いない。
メディアは、安易に言葉を使う。
民放はもちろんのこと、近年では、NHKでも ” ソウルフード ” を言うアナウンサーさえいる。
そんなこともあって、国民も使い始める。
他に言葉はないのか …
ローカルフード、ご当地グルメ、名物、名産 …
いろんな形容詞と組み合わせれば、様々に表現できると思える。
あまりに、語彙が貧困過ぎないか …
言葉とは、そうしたものと言う人もいるが、何かしら割り切れない思いがする。
<「『 ソウルフード 』と『 スヌープ・ドッグのお料理教室 』 / ふと想起される言葉 vol. 105 」はこちら>
<「「日田やきそば」の真実 Vol.2 『 B-1グランプリ in 北九州 』- イミテーションの粗製濫造 - 」はこちら>
<「 青春の思い出 " ふきや " のお好み焼き 」はこちら>
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