内閣総理大臣の被災地視察 … / ふと想起される言葉 vol. 105

 

 

その是非はともかく、大規模災害は、時に戦争の様態に例えられる。

 

地震は、爆弾やミサイルなどによる建物や施設への攻撃。津波は着上陸侵攻である。

 

災害の場合、対処する指揮官は、災害対策本部長である市町村長と県知事だ。

 

これが、大規模な災害ともなれば、その規模や状況に応じて、防災担当大臣(特定災害対策本部長)、内閣総理大臣(非常災害対策本部長、緊急災害対策本部長)が総指揮を執る。

 

本部長は、様々な情報を基に災害応急対策を行う。

 

そこには ” 蟻の目 ” による現状の把握と分析、そして、 ” 鷹の目 ” による全体を俯瞰した迅速かつ冷静な判断が求められる。 

 

これは、企業のトップに、経済学で言うところのミクロとマクロ両方の視点が求められるのと相通じる。 

 

 

 

さて、今回の災害の非常災害対策本部長である岸田首相は、今週13日にも登半島地震の被災地に入り、現地を視察する方向で調整しているという。

 

被災地では、被災状況や支援のニーズを自ら確認し、首長や被災者らとの意見交換も検討するという。 

 

これに先立つ5日、れいわ新撰組の国会議員が、自身のSNSで、被災地の現状を知るため現地に足を運んだと報告。その上で、8日には、「現場を見ろ」と被災地視察を控える首相を厳しく批判していた。

 

議員のそうした行動の是非について、ここでは言うまい。

 

元々、今月5日にあった与野党6党首会談では、現場の救命救助や生活支援を優先するため、党首クラスの被災地入りは当面自粛することを申し合わせていた。

 

しかるにである。

 

首相官邸は、2016年4月の熊本地震の際に当時の安倍晋三首相が、第2震の発災7日後に被災地に入ったことも考慮しての結果だという。

 

とは言え、これはまさに ” 朝令暮改 ” でありブレである。

” 臨機応変 ” とも決して言えない。

日和ったかどうかは別にして、こうしたタイプの人間は、指揮官には不適だ。 

 

指揮官に求められるのは、首尾一貫した思考と決断、そして行動だ。 

 

現状の把握は、それぞれの役割と所管する分野に応じて、各省庁・各機関等に任せるべきであって、今、総指揮官が自らが現地に出るタイミングでは決してない。 

 

過去の大規模災害における現地の実情に鑑みることなく、またも繰り返される愚行。

 

自らも被災しながら、不眠不休で職務を遂行している自治体職員をはじめ、様々な方々に、さらに不必要で大きな負担を強いることになる。

 

その胸中、察するに余りある。 

 

 

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