ー　焼きそばをツケで食べさせる … ?　日田焼きそばの鉄人、『 焼きそば 優心 』の大将の話　ー

 

 

私は、想夫恋飯塚店の初代店主、「 焼きそば優心 」の大将のことを、「 日田焼きそばの鉄人 」と呼んでいた。

 

鉄人は、初めての想夫恋との出会いで衝撃的とも言える感動を覚え、自らが「 想夫恋焼 」の焼き手となって、飯塚の地に店を開いた。

 

気さくで飾らない、一見、強面だが、実は優しい。

 

思いは一つ、美味しい「 想夫恋の焼きそば 」を一人でも多くの人に広めたい。

商売なんて二の次、客が喜んでくれればそれでいい。

 

そうした人柄と姿勢が人を惹きつけ、想夫恋ファン知る人ぞ知る名物大将となったのだが　…

 

2014年、鉄人は店を譲り、想夫恋から身を引いた。

 

 

 

 

一旦は、想夫恋から離れたものの、やはり「 日田焼きそば 」に対する思いは消え去ることはなかった。

 

半年後、宗像市田久に「 焼きそば 優心 」を開店し、再び鉄板の前に立ったのだった。

 

飯塚市から宗像市へ。決して近郊への移転ではなかったが、鉄人ファンは喜び、「 焼きそば 優心 」へもまた足を運ぶようになった。

 

飯塚店の時と同じように、頼んでもいないみそ汁が出る、餃子が出る。コーヒーが出ることもあった。お金を払おうとしても、受け取るような人じゃない。

 

金儲けは二の次、川筋気質の鉄人は、みずからが焼いた「 日田焼きそば 」をふるまうことが何よりの喜びだったと思う。

 

「 優心 」の近くには、東海大学付属福岡高等学校があった。

 

食べても食べても腹がへる育ち盛りの高校生たちが、店を訪れるようになった。

店内には、鉄人のファンとなった高校生たちの写真が貼られた。

 

聞くところとによると、金を持っていないときは、ツケで食べさせていた。

それも1回の食べしろじゃなく、数回分。

小遣いが入ったら、まとめて支払い  …

 

ツケで焼きそば … ？

 

そんな話聞いたことがない。鉄人らしい … そう思った。

 

こよなく想夫恋焼を愛し、人を愛した鉄人。

 

 

2020年3月、鉄人は引退した。

あれから早3年か …　

 

 

 

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