ー 有田焼 ブルーボトルコーヒー ドリッパーのこと ー

  

 

ハンドドリップでコーヒーを淹れ始めて、かれこれ50年あまり。

  

カリタの陶器製コーヒー ドリッパー101に始まってハリオのV-60 … etc.

 

色々、形状、材質の異なるドリッパーを使ってきた。

 

近頃はもっぱら、カリタの銅製ドリッパー ウェーブシリーズ。

 

味にブレがない。

 

ペーパーフィルターの端を折らずに使うところも好きだ。 

 

 

 

特に不満はないが、僅かに気になるのは水切れのこと。

 

ドリッパーを洗って水切りラックの置く。

 

ドリッパーの折り返しの部分に入った水が乾きにくく残ってしまう。

金属製の構造上やむを得ないが …  

 

同じカリタのウェーブシリーズ ガラスドリッパーは二分割の構造で、水は残りにくいが、扱いは少し面倒になる。

 

 

そういった点では、陶器製・磁器製のドリッパー方が扱いやすい。

カリタのウェーブシリーズには波佐見焼のものもある。

 

まぁしかし、同じ3穴のウェーブシリーズを買ってもね …

 

 

 

 

『 ブルーボトルコーヒー 』には、1穴磁器製のドリッパーがある。

 

今日、コーヒー界の「 Apple 」とも呼ばれる革命児の『 ブルーボトルコーヒー 』、サンフランシスコ発祥のブランドだ。

 

2015年の東京進出の際は、かなり話題を呼んだ。

 

残念ながら、今のところ福岡への出店はなく、これまで「 ブルーボトル コーヒートラック 」が福岡市美術館のアプローチ広場や警固神社の境内に期間限定で設置されたにとどまる。

 

 

 

 

そんなブルーボトルコーヒーが、

構造、形状、流れに注目してデザインしたのがこのドリッパーで、製造は、佐賀県有田町の久保田稔製陶所 『 久右ヱ門 』 だ。

 

 

波佐見焼のカリタ …

 

有田焼のブルーボトルコーヒーか …

 

いやいやなかなか面白い。

 

 

ー 有田焼と波佐見焼 ー

 

日本磁器の誕生から400年、佐賀、長崎両県にまたがる『 肥前窯業圏 』は、2016年、日本文化遺産に登録された。

 

日本屈指の窯業圏で、2県の県境に位置する有田と波佐見はとても深い関係をもつ。

 

17世紀初頭の豊臣秀吉による朝鮮出兵をきっかけに、朝鮮陶工によって日本に磁器がもたらされた。

 

その陶工に、李参平(りさんぺい)と、李祐慶(りゆうけい)の二人がいる。

 

 

李参平は、文禄・慶長の役の末期、鍋島直茂により日本に連れてこられた。

 

その後、陶工達を連れ帰った鍋島が、李参平が朝鮮半島で窯業に従事していたことを知り、重臣の多久安順(小城郡多久)の元で1599年(慶長4年)から陶器づくりを始めさせたとされる。

 

はじめ多久家領内の西高麗谷に住み、のちに西多久、藤の川内へと移りながら陶器の生産を行った。

 

しかし、その当時、日本国内で需要が高かった中国景徳鎮窯の白い磁器には及ばず、生産に適した白磁石を求めて鍋島領内の唐津焼を作っている窯を頼りに転々とする。

 

最後に有田西部地区の乱橋(現三代橋)に辿り着き、登り窯を築窯。

これが有田焼の始まりと言われる

 

 

片や李祐慶は、慶長3年(1598)大村藩主喜前公が朝鮮の役から帰国時に李祐慶を連れ帰る。

 

祐慶は、慶長4年(1599) 波佐見町村木郷畑ノ原に朝鮮式連房登窯を築いて「 やきもの 」 づくりをはじめた。

 

やがて苦労の末、慶長10年(1605)には三股山咽口(砥石川)に良質の陶石を発見し、一族とともに三股で窯を築いて磁器の製造を始めたのである。

後に李祐慶は、波佐見焼の陶祖と呼ばれるのである。 

 

 

     ※      ※      ※ 

 

 

江戸時代の窯業は、鍋島藩、平戸藩、大村藩といった藩の管轄下に置かれる。

 

有田焼は、鍋島藩が、有田の優秀な職人を囲い、繊細で華やかな絵付けを特徴として徳川御三家の献上品をつくらせる。

 

一方の波佐見焼も大村藩の支援を受けながら、白磁や青磁にあい色、淡色の絵付けを施したシンプルな磁器を基本とし、主に日用食器をつくりながら肥前の中核的な磁器産地に成長していく。 

  

同じルーツを持つものの、有田はで献上品としての磁器、波佐見では日常食器としての磁器が生産され、それぞれに自らの強みを活かしながら発展を続けて …

 

 

 

 

磁器のコーヒードリッパーのこと書くつもりが、有田焼と波佐見焼の話になってしまった。

 

それにしても、凡常の道具であっても、それぞれに歴史がある。

有田、波佐見に限らず、南部鉄しかり、燕三条しかり。

 

今日、当たり前に使っている道具一つにも、作り出してきた人々の情念が連綿と受け継がれている。

 

そうしたことを想えば、道具への向き合い方もおのずと変わる。 

 

 

     ※      ※      ※

 

 

さて、このブルーボトルコーヒー ドリッパー、カリタより幾分サイズが大きく、重量は約290g、カリタは約162gでかなり重い。

 

フィルターは、カリタのウェーブシリーズ 2~4人用が純正品のように使える。

 

カリタの波佐見焼コーヒードリップトレイに乗せてみる。

 

波佐見焼の白はやや青みがかった白、有田焼の方は温かみのある白。

しかしサイズはピッタリ。カリタのウェーブシリーズよりシンデレラフィットだ。

 

 

「 カリタ  リブなし3穴 」 VS. 「 ブルーボトルコーヒー  リブあり1穴 」

 

 

これからゆっくり、違いを楽しんでみよう。

 

 

 

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