幼い頃、時々、餃子屋に連れて行かれた。
6~7人のカウンター席のみ、奥行きは2mばかりの小さな店。
カウンター正面には、中国酒の壺がビッシリと並べられていた。
メニューは、餃子と中国酒だけ。
店主は、黒縁のメガネをかけた学究肌の人。
親父の話によれば、
旧帝大在学中に学徒動員で中国戦線に送られ、九死に一生を得て帰国。
故郷に戻って餃子屋をはじめたそうだが、そのいきさつや胸の内を語ることはなかったという。
店主と親父の間で交わされていた、ウーカーピー(五加皮酒)、コウリャンチュウ(高粱酒)と言った言語音が記憶に残っている。
※ ※ ※ ※
時々、中国酒を買って飲む。
中国酒と言っても「白酒」と呼ばれる蒸留酒だ。
白酒のアルコール度数は平均50〜65度で、とてつもなく高い。
まさに「 火酒 」だ。
そして、「 茅台一開 満室皆香る 」と言われるほど香り高い。
私が白酒を好むのも、幼い頃、鼻腔に漂った白酒の芳醇な香りの記憶によるものなのかもしれない。
今日の酒は「 天津高粮酒 」、アルコール度数は62度。
子どもの頃の記憶そのままの壺が郷愁を誘う。
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