『 ソウルフード 』と『 スヌープ・ドッグのお料理教室 』 / ふと想起される言葉 vol. 105

 

 

ー ソウルフード  ー

 

ある程度以上の歴史をもち好意的な思い入れをもたれている、その地域特有の食べ物のこと。

 

もともとソウルフードとは米国南部の黒人の伝統的な料理のことだが、特に2000年以降の日本ではソウル(魂、精神)との意味から派生し、各地特有の郷土料理などを指すことがほとんどとなっている。

 

北海道のジンギスカン、山形の芋煮、東京・月島のもんじゃ、大阪のたこ焼き、香川県の讃岐うどん、博多の豚骨ラーメンなどの有名なものから、全国的にはほとんど知られていない地場料理や菓子類、特産物などまで幅広い食べ物に対し用いられている。 

 

この出典は、『 知恵蔵 mini 』。

 

しかし私には、容認しがたい解説だ。

 

 

ウィキペディア「 ソウルフード 」はこちら>

 

 

 

 

平成24年10月、『 B-1グランプリ in 北九州 』に出展した「 日田やきそば研究会 」の公式ガイドブックには、次のように記載されていた。

 

 

ー 日田市民のソウルフードの一つ「日田やきそば」は、その独特の味わいが、「ラーメン店」のサイドメニューとして長年愛されていました。

 

 

「日田やきそば研究会」は、この地域の宝である食文化を通して、「大分県日田市」の魅力を、多くの人と分かち合う事を目指す会です。こんがり焼き上げたゆで麺と、たっぷりもやし!ネギ!豚肉!のパリッシャキッ食感!秘伝のソースが絶妙のハーモニーをかもし出す  ー

 

これに対し、当時、私は以下のように書いている。
『 ソウルフード 』? - 研究会  ソウルソウルとかまびすしい -

 

日田やきそば研究会が、にわかに使い始めた『 ソウルフード 』と言う言葉、近年、日本のメディアや雑誌で使われるようになった言葉である。

 

soul food を辞書で引いてみると、

 

  

◆ ロングマン現代英英辞典
  traditional foods that are cooked and eaten by African-Americans in the southern US
(訳)アメリカ南部で、アフリカ系アメリカ人に調理され、食される伝統的な食品

 

◆ ジーニアス英和辞典
(特に南部の)黒人の伝統的な料理[食物]、豚・子牛などの小腸やサツマイモなどを多く用いる.

 

◆ ウィキペディアフリー百科事典
ソウルフード(英語:soul food)とは、アメリカ合衆国南部で奴隷制を通して生まれた、アフリカ系アメリカ人の伝統料理の総称である。「ソウルフード」という名称が定着したのは、アフリカ系アメリカ人に関する事柄を指すのに「ソウル」(「魂」)という言葉がよく用いられるようになった1960年代半ば頃である。

 

◆ ジーニアス和英辞典、広辞苑 : 記載なし

 

 

地域特有の料理、或いは、地域で親しまれている郷土料理の意味で「ソウルフード」を用いるのは、日本のメディアなどの一部、俗語であり、いわゆる和製英語のようなものである。


似たような言葉に、「ソウルミュージック」がある。

周知のとおり、1950年代から1960年代の初期にかけて、アメリカにおいてアフリカ系アメリカ人によって創られ、1970年代に世界の音楽シーンを席巻した黒人音楽である。

 

もし、焼きそばを「ソウルフード」と言うのなら、さしずめ日本の民謡もソウルミュージックである。

 

 

 

「日田やきそば」の真実 Vol.2 『 B-1グランプリ in 北九州 』- イミテーションの粗製濫造  ー はこちら>

 

 

「「日田やきそば」の真実 Vol.1  ~ 何故、「焼きそば」ではないのか~ 」はこちら>

 

 

 

観光でやって来たアメリカ人に日本の郷土料理を指し、" soulfood " といったら …

きっと、怪訝そうな顔をするに違いない。 

 

 

しかし、今の日本の言葉とは、得てしてこうしたものだ。

 

誰が言い始めたのかも分からない不見識な使い方であっても、無分別に受入れる。

浅薄な民放は言うに及ばす、N○Kとて例外ではない。

そして、メディアが使えば、無定見な人々がそれを広める。

まぁ、何とも …  

 

 

ところで、手元に1冊の本がある。

 

ギャングスタ・ヒップホップ界のスーパースター、スヌープ・ドッグ。 

一流シェフ並みの腕まえを持ち、自らの料理番組も持つスヌープのレシピ集『 スヌープ・ドッグのお料理教室 』だ

 

スヌープが各地をまわる中で、気に入った食べ物・飲み物などを<リメイク&リミックッス>したもの。レシピ集と言うより、まぁ読み物に近い。

 

その中には、『 ソウルフード 』のレシピもある。

 

ー ビスケッツ・ウィズ・ダ・ティックネス・グレイヴィー ー

 

南部へ行ったことがことがあるなら、朝食にこれを食べたことがあるだろう。

これは正真正銘のソウルフードの王道と言える料理。

 

この料理の鍵は、ビスケットをフワフワに仕上げること。

それにグレイヴィ、まさにダーティー・サウスの蒸し暑い夏みたいなソースさ。エクストラでスーパー濃厚。

 

それなのに思わず食べ過ぎて、結局そのままベッドへ逆戻りしちまいたくなる朝食。

ヤワな奴には合わないだろうな。強烈な睡眠薬みてぇな料理だぜ。

 

 

 

面白いのは、訳者であるKANA氏が巻末に付けた『 代用食材リスト 』。

この本の中のレシピで料理を作る際、代用できる日本国内の食材のリストだ。 

 

ほぉ~、なるほどねって感じ。食材に関する知識がグッと広がる。

 

 

 

最後に、改めて申し上げるが、

 

「 日田やきそば 」= 日田やきそば研究会

 

『 日田焼きそば 』= (株)想夫恋の登録商標

 

 

 

 

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