ダイムラー・ベンツ DB 601 とメッサーシュミット Bf109 / 第二次世界大戦世界 傑作機 Vol. 2

< 出典 : www.aircraftaces.com >     
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第二次世界大戦の軍用機の中に、傑作機と呼ばれるものがある。

 

日本人なら、零式艦上戦闘機、通称「零戦(れいせん)」を思い浮かべる方も多いだろう。

 

ヨーロッパならば、バトル・オブ・ブリテンに登場するイギリスのスピットファイア、ドイツのメッサーシュミットBF109。

 

アメリカならば、大戦後期、多くの日本軍戦闘機や爆撃機を撃墜したヴォードコルセアF4U、ノースアメリカンP-51、リパブリックP-47サンダーボルト等々だ。

 

これらの中で、ドイツのメッサーシュミットBF109は、大戦中、最も多い35,000機が生産された単座戦闘機だ。

 

そしてこのメッサーシュミットBF109に搭載されたレシプロエンジンが、ダイムラーベンツDB601だ。

 

 

「ベンツ」と聞くと、たいていの日本人が高級車の「メルセデス・ベンツ」を思起する。

 

ベンツの話はややこしいので、かなり大雑把に述べる。

 

ダイムラー・ベンツは1926年から1998年まで存在したドイツの自動車メーカーで、

1998年、アメリカの自動車メーカークライスラーを事実上吸収合併し、社名を「ダイムラー・クライスラー」に変更する。

 

2007年、ダイムラー・クライスラーは不振のクライスラー部門を米投資会社に売却し、社名を「ダイムラー」に変更し、現在に至っている。 

 

メルセデス・ベンツは、そのダイムラーが所有する乗用車・商用車のブランドだ。

 

 

 

第二次世界大戦において、そのダイムラー・ベンツがナチスに協力し、開発・製造した航空機用レシプロエンジンの一つがDB601だ。

 

 

メッサーシュミットBF109E型が搭載したDB601は、同時代の最先端技術と高度な工作精度から誕生した。

 

 

離昇出力1100馬力は、際立った数値ではないが、液冷倒立V型12気筒の気筒配列は、発動機中央に機銃が通せる構造で、燃料直接噴射ポンプの搭載、エンジン側面に装備されたフルカン式継手を用いた無段変速の過給機、分割式ローラーベアリングをコンロッド大端部に用いるなど、非常に高度で複雑な機構を数多く採用している。

   

とりわけ、各気筒にガソリンを直接噴射する燃料ポンプの効果は絶大で、急降下によりマイナスGがかかっても、燃料を安定供給できた。 

 

 

バトル・オブ・ブリテンにおいては、宿敵スピットファイアに追撃されると、急降下で離脱を図った。

 

スピットファイアは、急降下するとキャブレター方式のエンジンがマイナスGで息つきを起こすため、BF109は容易に振り切ることができた。

 

映画『スクワッド303 ナチス撃墜大作戦』の中では、ポーランド人技術者が、ドイツの技術者から直噴のことを懸命に聞き出そうとするシーンが描かれている。 

 

こうした様々な技術を導入したDB601は、まさしくドイツの最先端技術の結晶だった。

 

ちなみに日本では、1939年、陸軍の指示により、川崎航空機がこのDB601のライセンス権を購入し生産したエンジンが「ハ40」だ。

 

そして、そのハ40を搭載したのが「三式戦闘機  飛燕」で、当時の日本唯一の量産型液冷戦闘機である。

 

しかし、基礎工業力の低かった当時の日本にとって、高い技術力が求められる液冷エンジンは、生産・整備ともに上手くいかず、常に故障に悩まされた戦闘機として知られている。

 

 

 

「ミリタリー・自衛隊」はこちら>

 

< 参考書籍:『 世界の傑作戦闘機とレシプロエンジン 』>

 

 

第二次世界大戦で活躍した軍用機に関する書籍は星の数ほどある。

 

開発の歴史や秘話、性能・諸元などテーマは様々だが、総じて、個別軍用機の一系統、言い換えれば縦の流れで書かれている。

 

それに対し、この本は、複数の傑作機を選び、その機に搭載されたレシプロエンジンを主題とした、いわば横串の構成となっている。

 

こでまでになかった一冊だ。

 

 

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