織田信長 『 沙門の道に背きし売僧だで … 』/ ふと想起される言葉 vol. 33

 

 

二十年以上も前のこと。

博多中州のとある店で時々飲んでいた。

 

いつ行っても、ボックスに二人組の男性客がいる。

 

二人ともスキンヘッド、いつも赤いベストやピンクのシャツなどの派手な服装。

 

 

ある時、そっとホステスに聞いてみた。

 

” あの二人、その筋の人 ? ”

 

” 御供所のお坊さん達よ "

 

" なっ、なに~ !!!   あいつら坊主かっ ! "

” お布施で、いつも飲んでやがんのか !”

 

" シーッ "

 

ちょうど、津本 陽 氏が織田信長を主人公に、1560年の桶狭間の戦いから1582年の本能寺の変までを描いた小説、『 下天は夢か 』がベストセラーとなった頃だった。

 

 

ー 沙門の道に背きし売僧だで ー

 

『 下天は夢か 3  』で比叡山焼き討ち命ずる織田信長に、将領から反対の声があがり、

信長を諫めた佐久間信盛に対し、信長は峻烈に言った。

 

ー あやつどもは魚鳥をくらい女人とたわむれ、沙門の道に背きし売僧(まいす)だで。

天下の政道をあいさまたげ、仏意神慮に背く国賊のたぐいだぎゃ。

いまあやつどもの亡ぶは自業自得。なにをもって赦免いたせと申すでや。 ー

 

 

その店には、別の坊さんも来る。

 

○○寺のお坊さんは誰ちゃんのお客さんで、△△寺は、何子ちゃんのお客さん … ってな具合。

実際、そんな坊さんの一人がテレビ番組に出演し、高尚に語っているのを観たこともある。

 

彼らは、開店早々からやってきて、ひとしきり飲んで歌うと、サッと出て行く。

そして、次の店に行く。それが彼らの檀家まわりだ。

 

この手の話は、京都ををはじめ、神社・仏閣で有名な街ではよく聞く話だ。

 

僧侶、お坊さん、和尚、聖人、上人、大師 、そして売僧か  …

 

こうした方々、近頃はコロナ騒ぎでお布施も減っちゃって大変なんでしょうが、なんと言っても涅槃に生きる方々。

 

きっと、地域経済を支えるためコロナの感染リスクなどものともせず、檀家まわりに励んでおられるのだろう。

 

 

「ふと想起される言葉」はこちら>