押し入れを整理したら、FOSTEXのスピーカーユニットが2つとバックロードホーンスピーカー一組が出てきた。
15年ほど前、自作のスピーカーを作っていた頃のものだ。
エンクロージャー(スピーカーの箱)は昔のまま、スピーカーユニットコーン(振動板)の中央ドームに僅かなへこみがあるが、まだ鳴らせそうだ。
箱に入ったFF85Kも、少しばかり黄ばんだ気はするが、使えるに違いない。
それにしても懐かしいな…
<「バックロードホーン + フォステクス FF85K + パーソナル・アンプ AP15d ー スピーカーの再稼働 vol. 2 ー」はこちら>
バックロードホーンスピーカーとは、
ざっくり言えば、エンクロージャーの中に複雑に織り込まれた迷路のような音道(ホーン)が内臓された構造のものを言う。
かつて、真空管アンプの出力がわずか数ワットしかなかった時代、不足する低音域を補うために作られたエンクロージャーだが、構造が複雑で高コストなことから、過去、国内のメーカーでもわずかな種類の製品が売られたのみである。
昭和60年に、オーディオ評論家の長岡鉄男氏が自作したバックロードホーン型スピーカー「スワン」を評論家の立花隆氏が絶賛したことを契機に、バックロードホーンの名が一気に世に広まった。
氏が生み出したフルレンジ一発と呼ばれたバックロードホーンの中音域は明るく伸びやかで、高級なメーカー品を凌ぐと言われた。
ちまたでは、「長岡教徒」と呼ばれる長岡氏の熱烈なファンが生まれ、氏が亡くなって20年近くが経つ現在もなお、その人気は根強く残っている。
一方で、バックロードホーンの音色を好まないオーディオ愛好家からは痛烈に批判されるなど、極端に好みの分かれるスピーカーだ。
私はバックロードホーンの音色が好きでいくつかのキットを使って自作したが、今回見つけたもの以外は友人達にあげてしまった。
その形様には、暖かくレトロで独特な雰囲気があり、音色の好みはともかくインテリアとしても喜ばれた。
エンクロージャーのキットは、コイズミ無線だったか、吉本キャビネットだったか、何処のものか覚えていないが、福岡市中央区天神の「かほパーツセンター」で買ったものだ。
今回出てきたスピーカーは、上の写真の設計とはホーン部が幾分異なっている。
サイズは、幅17 × 高さ44.5 × 奥行30cm。
スピーカーユニットを組み込んだ総重量は約7kg。
何枚もの板を貼ったホーン部の構造により、このサイズのスピーカーとしはかなり重い。
スピーカーの重さは、音の良さの証。
それなりに一所懸命こしらえた。
スピーカーユニットは、FOSTEXフルレンジ8cmのFF-85K一発。
ユニット中央のアルミ系金属ドームの特性なのか、きらめきのある華やかな印象。
人によってはピーキーと言う人もいたが、中高音が鮮明で低音もそれなりに出る。
エレクトリックな音楽には不向きだが、無伴奏チェロやバイオリンの表現力は素晴らしく、女性ジャズボーカルの伸びやかさは素晴らしかった。
一世を風靡したブックシェルフのYAMAHA NS-10Mを上回る音色だと感じた。
ワニスだけの塗装は、年月がにじんだ色合いになっている。
FOSTEXを知る人は、そう多くはないと思う。
OEM生産を主力とする音響機器メーカーのフォスター電機(株)の自社ブランドが、「FOSTEX」である。
上述の長岡鉄男氏が、その後も次々とバックロードホーンのエンクロージャーを設計・製作し、これにFOSTEXのフルレンジスピーカーユニットが使われたことから、FOSTEXブランドは自作マニアの絶大な支持を得ていくのである。
箱には、2,960円のヨドバシの値札が貼られている。
FF85Kは既に廃番で、後継機のFF85WKは、現在、ヨドバシ博多では4,980円売られている。(写真 前列左)
しかしこんな値段だと、一組のスピーカーを作るのに1万数千円かかってしまう。
そのためか、FOSTEXでは昔はなかった一つ1,000円ほどの廉価なP800Kというモデルが追加されている。
それにしてもこのスピーカー、このまま眠らせておくのももったいないな…
鳴らしてみるか…
未使用のFF85Kは?
また、スピーカー作ってみるか…
そんなことを思ったのです。
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