少し前、初めて海自カレーを食した。
巷で売られているものではなく、護衛艦いずもに乗艦した際に出されたカレーである。
日本海軍の伝統を受け継ぐ、本物の海自カレーだ。
メインのチキンカレーに、コールスロー、ゆで卵、揚げ物。そして、福神漬とらっきょ。
本当に美味しかった …
その日使われたペーパーテーブルマットには、以下とおり記載されている。
明治に入って創設された新生日本の海軍は、英国海軍を範として成長した。
イギリス人は、長い経験からバランスのとれた「シチュウ」を好んで食べた。
船で航海する時は、味付けに使用する牛乳が長持ちしないため、長持ちのする香辛料として「カレーのパウダー」が考案された。
これが英国海軍「軍隊食」となった。
日本海軍と英国海軍との交流が盛んになり、我が海軍においても英国艦艇と同様に「カレー」をパンに付けて食べていたが、日本人は「パンではどうも力がでない」ということで、日本流にとろみを付けたカレーに変身させご飯にかけて食べたところ、これが、イケルということとなり、以後、「日本海軍食」となり、日本海軍発祥の地、横須賀から全国に広まったものである。
明治四拾一年九月一日
材 料 牛肉(鶏肉)、人参、玉葱、馬鈴薯、カレイ粉、
麦粉、米
作り方 始メ米ヲ洗ヒ置キ、肉、玉葱、人参、馬鈴薯ヲ四角に恰モ賽ノ目ノ如ク細ク切リ別ニフライパンニ ヘッドヲ敷キ、麦粉ヲ入レ狐色位ニ煎リ、「カレイ粉」ヲ入レ、スープニテ薄クトロノ如ク溶カシ、之ニ前ニ切リ置キシ肉野菜ヲ少シク煎リテ入レ(馬鈴薯ハ人参、玉葱ノ殆ド煮エタヲ入ル可シ)弱火ニ掛ケ煮込ミ置キ先ノ米ヲスープニテ炊キ之ヲ皿ニ盛リ、前ノ煮込ミシモノニ塩ニテ味ヲツケ、飯ニ掛ケテ供卓ス。此ノ時漬物類即チチャツネヲ付ケテ出スモノトス。
少し読みにくいので、現代文にしてみた。
<材 料>
牛肉(または鶏肉)、ニンジン、玉ねぎ、ジャガイモ、塩、カレー粉、小麦粉、
ヘット(牛脂)、米、スープ 添え物として漬物(チャツネなど)
<作り方>
・ 初めに、米を研いでおく。
・ 肉(鶏肉)、玉ねぎ、ニンジン、ジャガイモをサイコロの様に切る。
・ フライパンにヘット(牛脂)を布き、小麦粉を入れてきつね色くらいに煎り、
カレー粉を加え、スープで薄すトロの様に溶かし、
・ これに、前に切っておいた肉野菜を少し煎って入れ、(ジャガイモは、
ニンジン、玉ねぎが、ほぼ煮えたときに入れる)弱火にかけて煮込む。
・ 米をスープで炊き、炊き上がったら皿に盛る。
・ 煮込んだもの(カレー)を塩で調味し、皿に盛ったごはんに掛けて供する
・ 供する際、「チャツネ」などの漬物を添える。
このレシピは、ウィキにも記載されており、挑戦する人も多いようだ。
ところで、レシピ中の『 チャツネ 』 の記述から、昨今出回っている甘いチャツネを調理の際(煮込み)に使う御仁がおられるようだが、たぶん誤りだ。
海軍が手本としたイギリス海軍のカレーで使われたチャツネは、野菜や果物に香辛料、酢、砂糖、塩などを加えて作られたインドチャツネで、薬味やソースの様なものであったと思われる。
そのあたりの意味合いが、「 此ノ時漬物類即チチャツネヲ付ケテ出スモノトス 」の記述である。
それにしても、見栄を張ったと言うか、大人ぶったと言うか、勧められたのに、おかわりしなかったのが、何とも悔やまれる。
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