昔、徳川家康が近習に(一節には春日の局とか阿茶局の説あり)、世にもっともおいしいものは何かと問うた時、
「 それは塩にございます 」と答えた。
「 世の中でもっともまずいものは何か 」と重ねて問うと、
「 やはり塩にございます 」と答えたとの逸話があるとのことです。
ところで「酒は百薬の長」、これは皆さんご存じ。
けれど「塩は食肴の将」、こっちの方は、あまり知られてはおりません。
( 出 典 )
【 漢書・巻二十四下・食貨志下 】より
夫鹽食肴之將、酒百薬之長、嘉會之好。鐵田農之本、名山大澤、饒衍之臧。
夫(そ)れ鹽(しお)は食肴(しょくこう)の将、酒は百薬の長、嘉會(かかい)の好なり。鐵(てつ)は田農の本(もと)、名山(めいざん)大澤(だいたく)は饒衍(じょうえん)の臧(ぞう)なり。
( 現代語訳 )
そもそも塩は食物に最も肝心なもので、酒は多くの薬の中で最もすぐれており、めでたい会合で嗜(たしな)むよきものである。
鉄は農耕の基本となるものであり、名山や大きな湖沼(こしょう)は、(狩猟や漁業の)豊饒(ほうじょう)な蔵(くら)なのである。
何故、だしのページで塩なの ?
そうお感じの方がいらっしゃると思います。
どんな料理でも、塩なしでは料理になりません。
醤油、みそ、酢などの調味料も塩は欠かせません。
そして、昆布だしのグルタミン酸ナトリウムやかつお節のイノシン酸は、塩なしでは、それをうま味として感じることができないのです。
グルタミン酸ナトリウムの溶液に塩をわずかに入れることで、うま味が一気に現われるのをみると、全ての味の根源は塩にあると、しみじみ感じます。
塩は、ほかの調味料とは、その重みが次元的に異なるのです。
昆布やかつお節のだしを取るようになって、改めて、塩の重要性を感じるようになりました。 < 続く >
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