飯塚市から、嘉穂方面に抜ける県道211号線の道沿い、旧稲築町山野(現嘉麻市)にあるうどん屋『 めんくいてい 』。
店名は、 一寸ばかり垢抜けしないが、味は一流、中々の名店である。
以前、筑豊と言えば石炭と炭鉱、そして、荒々しく攻撃的なイメージを抱く人が多かった。古処連峰に隔てられた甘木・朝倉地域の人は、鬼が出る街と言っていた。
若い頃、飯塚市内に職場があり、5年を過ごした。
人情に厚く、竹を割ったよう気質、まるで落語噺に登場する「八つぁん、熊さん」、江戸の下町のようだった。
かつて、炭鉱での労働は明日をも知れぬ危険な仕事だった。
「食べる物くらい美味しいものを食べ、心残りがないように」、「宵越しの金は持たない」、そんな川筋気質。
そうした筑豊特有の気風が、贅を尽くした美味いものの名店を育て、それがまた人々の舌を肥やしたのである。
現在のことはわからないが、福岡の魚市場から走る1号車は筑豊方面へ向かったといい、とりわけ飯塚には、魚市場、青果市場、商店街の公設市場があり、各方面の名物を揃えた商品店、慶事のカマボコ店が軒をそろえていた。
そして、甘いものを好んだ炭鉱マン達の需要に応えて銘菓が次々と誕生した。
千鳥饅頭、ひよこ饅頭は、全国区に。ほかにも、すくのかめ、又兵衛饅頭に山田饅頭など隠れた銘菓も多い。
また、直方の成金饅頭、もち吉、田川の黒ダイヤ、チロルチョコなどもよく知られている。
そんな舌の肥えた筑豊びとから支持を得続ける
「 めんくいてい 」。
昔、飯塚でうどんと言えば、「 大助うどん 」だったのだが、今は見る影もない。
本日は、肉とごぼう。
特徴は、その麺。かなり細い。
適度にコシがあり、柔らかくつるみのある食感は、まるで稲庭うどんのようだ。
だしは、グルタミン酸とイノシン酸のバランスがよくてまろやか。
納得と満足の880円、いつ食べても美味しい。
<「外メシのブログ」はこちら>
コメントをお書きください