40年近くも前のこと。
友人の部屋に、男ばかり数人が集まり酒を飲んだ。
酒がなくなり、どうするか思案していたら、同じアパートに住む一人が、取って置きだと言って持ってきたのが、箱に入った「 VAT 69 」という酒だった。
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友人 A : 何か、やらしい名前だな。
友人 B : 何を想ったか知らんが、それは君の精神が下劣だからだ。
そうB君は言って、酒のうんちくを語った。
このウイスキーが誕生したのは1883年のこと。
Vatとは樽のことで、モルトとグレーンの原酒比率を変えたり、試行錯誤を繰り返して100の試行作品を完成させた。それらを100の樽に入れて番号をつけ、ウイスキー好きの友人や知人のブレンダーを招いて実際にテイスティングをしてもらった。その時に全員一致で「これがベスト!」と名指しされたのが69番目の樽で、それでこの名が付いたとういう。
当時は、めったにお目にかかれない、1本1万円以上する高級な酒で、こっそり家からくすねてきたものだと言った。
めずらしい酒と言われて、有り難い気はしたが、スコッチの味がわかる年ではなかった。
昔売られていたVAT69特級は、今は売られていないので、オークションででも手に入れないと飲むことはできない。
今は、新しいボトルが売られている。
ボウモアやマッカランの様な強い個性はなく、ウイスキー本でも取り上げられることは希だ。
アメリカのテレビドラマ「バンド・オブ・ブラザース」で ルイス・ニクソン大尉が好んで飲んでいたことから、昔のVATことを知らない世代にも少し知られるようにはなったようだ。
スーパーでは買えないが、リカーショップ「やまや」では、1,300円ほどで売っているので時々買って飲む。
アロマだ、フレーバーだなんてややこしいことを考えずに飲む。
私には、丁度、テーブルワインのようなもの。
ほのかに甘みがあって、主張が強くない。後味がよくて、すこぶる飲みやすい。
大酒飲みに好まれる酒だと思う。
ボトルを開け、最初にグラスに注ぐ時、コンコンコンコン、コンコンコン。
何ともいい音。
今日は、チーズとサラミで一杯。
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a_mizu_51 (水曜日, 18 11月 2015 19:04)
お邪魔いたします。
古いVAT69のファンです。
「オレンジ色のスケッチ」を読ませていただいて、何だかとっても嬉しくなりました。
なかなか言葉にしにくい要素をとても上手く表現なさっていると思って、思わずコメントを入れさせていただきました。
今から40年くらい前には、VAT69というのは、オールド・パーと良い勝負をする非常に素晴らしいスコッチでした。
もしも興味がお有りでしたら、グレゴリー・ペック主演の二十世紀フォックス映画「頭上の敵機(Twelve O'Clock High)を、レンタルDVD等でご覧いただければと思います。
とても残念なことですが、現在のVAT69は当時とは違う製品になってしまっているように感じられます。
上総次郎 (木曜日, 19 7月 2018 21:41)
60年ほど昔のことになりますが、靖国神社の下、九段下の堀の近くに、ダンという名前のトリス・バーがありました。いつも飲むのは、トリスのハイボールでしたが、棚には、国産のブランデーのほかに、カナディアン・クラブ、シーグラムVOといったカナディアン・ウイスキーにこのVAT69の瓶も置いてありました。いちど、奮発して、飲んだことがありますが、どんな味だったか、全く覚えていません。あのあたりも、全く変わってしまいましたが、きれいな、
お姉さんの「君ちゃん」まだ、ご存命でしょうか?
見当違いのコメントでごめんなさい。VAT69ということで、懐かしさからコメントいたしました。