- 我々は猫である ② -

 

また、あの男がやって来た。

 

これまでになく、自信をみなぎらせた表情だ。

何だよ、変なヤツだ。

 

黒いカバンに手を突っ込むと、ごそごそと中をまさぐり、缶詰を取り出した。


” いなば ” 、そして、「前浜の魚だし仕立 かつお丸つぶし」と書いてある。


いなば食品の缶詰だな。それにしても、御大層な商品名だ 。

 

 

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      いなば 鰹丸つぶし
      いなば 鰹丸つぶし

 

いなば食品か。


昭和33年にペットフードの生産を始めて、その後、はごろも缶詰「シーチキン」のコピー商品を作ってた会社だ。

 

近頃じゃ、カレー缶があたって、たいそう景気がいいようだが、まぁ、俺たち猫族と犬族が会社を大きくしてやったようなもんだ。

 

そんなことを考えている間に、男が缶詰を開け、半分ずつ少し離して盛った。

 

そして、相棒を呼んだ。「クロ、クロ」。

 

なに、確かに相棒は黒猫だ。ここに来る女子の多くもそう呼ぶ。

それにしても、まんまじゃないか。ベタな呼び名だ。

 

 

すると次に、俺を「ガー」と呼んで、手招きするではないか。


何だ、その「ガー」ってのは。

男を睨みつけると、本当はガーフィールドと呼びたいが、長くて面倒なのでガーにしたと言った。

 

何、ガーフィールド ? 冗談じゃないよ。
確かに、ヤツはオレンジ色に縞模様が入ったオスの虎猫だが、俺はあんなブタ猫じゃない。

それに、ラザニアなんて大嫌いだ。

 

本当に、この男には全くセンスてーものがない。
そうは思っても、何しろ缶詰は食べたいので、黙って食った。もう俺は寝る。


しかし、俺は礼儀正しい猫だ。一応、礼だけは言った。


「すまんな」