一つ年をとりました。
映画評論家の故淀川長治氏は「誕生日というのは、自分を産んでくださったお母さんにに感謝する日」と繰り返し述べていたそうです。知り合いの中国人の多くも、同様に考えています。
生と死を考える日だという人、ほとんど何の思いもない人…さまざま…
私の場合、少しばかり、昨日までを振り返り、残されたこれからを考える…
そんな日は、取って置きの中国『 西鳳酒 』 を開けて…
中国酒を好む日本人は多いのでしょうか?
よくわかりません。
中国酒について書かれた書籍の少なさを見ると、さほど関心は高くないと思います。
知っている中国酒はと尋ねると、たいていは、紹興酒、老酒、桂花陳酒、杏子酒…。
毛沢東が好んだ「茅台酒」を飲んだことがある人は希です。
十年ほど前、中国酒をよく飲みました。
そして、中国酒のことをもっと知りたいと思って買ったのが、この『 黄土に生まれた酒 』です。
著者の花井四郎氏は、長年、宝酒造(株)で酒造りに携わった技術者、研究者です。
これまで、日本で出版された中国酒に関する書籍の中では、最も優れたものです。
中国酒の中で、白酒(ぱいちゅう)と呼ばれる蒸留酒をお土産にもらって、臭いがきつく、とても飲めなかったという話をよく聞きます。
白酒の特徴は、芳醇な香味・香気です。この香気を生み出すのがエステルです。
そして、多種類のエステルができるためには、発酵の過程で、酢酸、酪酸、カプロン酸、乳酸などが生成されなくてはなりません。
酪酸は、乳製品が酸敗したときの不快な臭い。
カプロン酸も酪酸と同様に、日本人に馴染めないチーズフレーバーに含まれている汗臭いにおいです。
原料が粗悪だったり、未熟成だったりすると酪酸やカプロン酸が強く臭い、とても飲めません。
上質の白酒は、素晴らしく香ります。
風味は、芳醇な甘みがあるもの、重厚な酸味を感ずるもの、飲んだあとにも長く渋みが残るものなど、その味わいは、多様多彩です。
今宵の白酒は、西鳳酒です。
中国の全国評酒会議で選ばれた中国最高ランク「八大銘酒」、中国で最も優れた銘酒の一つです。
西鳳酒は、酸味、甘味、苦味、辛味、香味の五つが一体となり、少しの酸味、ほのかな甘み、渋味はなく、程良い苦味。香りは清く爽やかで、後味がとてもよい酒です。
悠久の歴史に育まれた酒を酌み、国を想い、自らを思います。
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