髭が伸びる。1日経てば青黒くなり、2日目で、泥棒風になる。
毎朝剃るのは面倒であるが、やむを得ない。
数年前、この面倒な髭剃りを少しでも楽しむため、業務用のカミソリを買った。
博多駅そば、当時行きつけの理髪店にお願いして、業務用のものを取り寄せてもらったのである。
一緒に、カミソリの替え刃、シェービングポット、シュービングブラシ、ひげそり用粉石鹸と振り出しポットを購入。全て業務用である。
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このカミソリ、使うのがかなり難しい。
先ず、髭を剃るための準備として、沸かしたお湯にタオルを浸し、それで髭を蒸して柔らかくする。
次に、泡立てた粉石けんをブラシでたっぷりと顔・首に塗り、柔らかくなるのを待つ。それから、おもむろに剃りに入る。
刀で言えば柄(つか)にあたる部分を、親指と人差し・中・薬の三本の指ではさみ、小指を反り上がった端にかけて握る。20°~30°程度の角度で頬に当て、力加減に気をつけながら、慎重に髭を剃り落とす。
とりわけ、首やあごの逆剃りは相当に注意しないといけないが、ビクついてもいけない。かえって怪我をする。
こんなことを思い立ったのは、何故だろう。
少年期、テレビでは、現在の韓国ドラマのように、西部劇、アメリカ映画が毎日のように放映されていた。その中で登場する主人公達が、バスタブの中でカミソリを使って髭を剃る。
この男臭く、野性的な所作が生み出すある種のダンディズム。それへの無意識の憧れ。
そんなところであろうか。
ところで、以前電車の中で、手鏡を見ながら、一心に髭を抜く若者を見たことがある。
若い男性の中性化、女性化などと言われて久しいが、人前でのこのような振る舞いは、そもそも、美しくない。電車の中で、人目もはばからず化粧する女性の姿と重なって見えた。
さて、このような業務用の剃刀を使っての髭剃りなど、とても日々出来ることではない。土曜か日曜、時間と心の余裕がある時にしか出来ない。
電気カミソリなら、時間もコストも大きく減らすことが出来るが、硬く曲がった髭は、上手く剃ることができない。
それで、ウィークデイは、少しは手早く剃れるジレットかシックのT字カミソリを使っている。
昔は、1枚刃。そして、2枚、3枚…。今は、何と5枚刃。
今回初めて5枚刃を購入。貝印の5「 KAI5」である。Amazonで偶然見つけた代物。近くのスーパーには置いていないもので、そのシンプルで流麗なフォルムに一目惚れ。つい、買ってしまった。
今までのものと比べると、明らかによく切れる。髭の目詰まりもない。替え刃も買いやすい値段。かつ、KAI5、KAI4、KAI3の替え刃が共通なのも魅力であるし、またいつでもAmazonで買えるのが嬉しい。
おばさんのようなおじさんではありたくない。
伊達、粋な男、わずかでもそうありたいと願う。故に、髭剃りにも美学が必要なのである。
これで、日々の髭剃りが少しは楽しくなればよいが。
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