日本でお茶を飲むときに使う急須を、中国では茶壺(ちゃふう)と言う。
取っ手が付いていない『 蓋碗(がいわん) 』も使われる。
蓋碗には、茶壺とはまた違った美しさや優美さがある。
がしかし、扱いは難しい。
先ず、手のサイズに合ったものを選ばないと上手く使えない。
一番の問題は ” 熱さ ” だ。
水の温度で言うと、日本茶の場合、旨み成分を引き出したい玉露は50度程度。
煎茶の場合、渋みを抑えて旨み成分を引き出すのは70~80度。
一方、中国茶の場合も茶葉の種類によって水温は異なるが、85度以上、あるいは95度以上など、総じて、日本のお茶と比べて高温だ。
蓋碗の材質は、磁器か、陶器と磁器の中間のやきものである炻器(せっき)も多い。
磁器や炻器は、陶器と比べると熱を伝えやすい。
蓋碗自体が熱くなるし、漏れてくる湯気も熱い。
蓋碗には取っ手が付いていないので、当然、器を持つ指先が熱くなる。
使いこなすには、蓋のずらし加減や指の使い方などのコツをつかむ必要がある。
一般的な茶壺(急須)と蓋碗を合わせたような形状の茶壺がある。
軀幹(本体)や注ぎ口・蓋は、急須と同じだが、取っ手は付いていない。
日本では、『 宝瓶(ほうひん)』とも呼ばれている急須だ。
玉露や煎茶などのうま味を、余すところなく引き出して飲むのに適している。
一説によれば、昔はお茶を宝としたため、この名前で呼ばれるようになったとか。
※ ※ ※
随分昔、日本のお茶の産地を紹介したTV番組で、生産者の皆さんが、休憩の時にこうした『 宝瓶 』でお茶を飲んでいる様子が放映された。
宝瓶を入念に振り、お茶を一滴残さずを出し切って飲んでいらっしゃった。
そんなこともあって、萬古焼きの宝瓶を使うようになった。
日本の宝瓶には、様々な形のものがあるが、やはり指を添える耳(突起)が付いたものの方が指が熱くならないし、しっかり挟み易い。
この春、同じような形状の中国の茶壺を手に入れた。
萬古焼きより手に合うし、色、形もすこぶる気に入っている。
が、私にとっては安いものではないので、扱いには気を遣う。
気楽に普段使いできるものは …
で見つけたのが、中国メーカー『Boundless Voyage 』のこのチタン茶壺。
ダブルウォールの茶盃が付いたセットもある。
先だって、霧島連山を歩いた際に携行したのも、同じメーカーのチタン製の蓋碗セットだった。
とてもよく出来た蓋碗だが、蓋碗は蓋碗。
やはり熱い。
一方、この茶壺はその蓋碗より進化している。
本体と茶こしの二重構造。
耳(突起)も付いているのでさほど熱くならないし、茶こしの受け皿も付いている。
風姿・風合いから言えば、上の陶器の茶壺と180度異なる。
片や詫び・さび風、こっちは無機質でSF的、ボテッとして婉麗さなど全くないが …
チタンは、軽く、硬く、割れない、錆びない。
愚生に限らず、昔人のトレッカーにはチタン製の道具に対する名状しがたい憧憬を抱いている人が少なくないように思う。
家の中で、扱いを気にせずに使える。
言うまでもなく、山歩きやキャンプでも使える。
後引きがあるが、使い方次第。中国の茶壺は、そうしたものだ。
ところでこの『 Boundless Voyage(バウンドレスボヤージュ)』なるブランド。
チタン製のキャンプ用品に特化した中国のブランドだ。
山やキャンプで使うチタン製の道具と言えば、国内産か否かはともかく、EPI、ユニフレーム、エバニュー、スノーピークなど、日本のメーカーのものばかり使ってきた。
” ものづくり日本 ” …
日本ブランドに対する、盲信に近い思いを持っていた。
5年ほど前、『 Lixada 』という中国ブランドのチタンマグカップを二つ買った。
品質、デザイン、使い易さ … は、日本製と同等 … ?
いやいや、蓋碗にしろこの急須にしろ、盃や茶碗の蓋はダブルウォール。
日本のチタン製品で、こうした成形のものを見たことはない。
品質、機能ともに、日本ブランドを凌駕し、価格も安いものが多くなった。
中国ブランドのチタン製品のレベルは、数段、日本のメーカーの先を行っている …
この春、『 Boundless Voyage 』の蓋碗を買ってみて、この考えを再認識した。
同じようなコメントがネットに少なからず見られるのは、事実の現れなのだろう。
※ ※ ※
ちなみに、蓋碗セットと茶壺セットの茶盃は同じサイズだ。
中に入れてみると …
おおっ、ぴったり収まる。
次回の山歩きでは、この茶盃をスタッキングして携行しよう。
<「 山でお茶 編 / 霧島連山を歩く ③ 」はこちら>
<「 Boundless Voyage チタン 蓋碗 / 中国茶を愉しむ 」はこちら>
<「 中国携帯茶器セット /中国みやげの茶葉と茶器 vol.2 」はこちら>
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