ー トヨタ自動車 豊田章男会長と日本の『 ものづくり 』 ー

 

 

先だって、トヨタ自動車は、グループの豊田自動織機が生産するディーゼルエンジンで認証取得の不正があったとして、このエンジンの供給を受ける国内向けの6車種を含む合わせて10車種の出荷を停止することを決めた。

 

 

 

先月末、トヨタの「源流」である豊田自動織機が、フォークリフトや建設機械用のエンジンに続き、新たに自動車用エンジンでも不正が確認されたと発表。

 

昨年暮れには、子会社のダイハツ工業に生産終了モデルを含め、64車種174件という大規模な不正が発覚したばかり。

 

子会社では2022年3月にも日野自動車でエンジン認証試験の不正が発覚しており、グループ内は、次から次と不正のオンパレードだ。

 

トヨタ自動車の豊田章男会長は30日、名古屋市内で緊急会見。

トヨタグループ各社で相次ぐ不正問題について陳謝した。

 

豊田会長は「認証試験で不正をしながら量産してしまった。販売してはいけない商品を届けてしまった」と語り、「信頼回復には時間がかかる」との認識を示した。

 

そして、トヨタのかつてのリコール問題などに触れ、「グループの中で、一番最初に信頼を失ったのはトヨタなので、相談相手としては頼りになる存在になるのでは」と話した。  

 

相次ぐ不正の要因として、「 現場が上にモノを言えない空気が広がっていた 」と指摘される中、何とお気楽、あまりに軽々しい言葉だ。

 

 

 

 

以前、この豊田会長の言葉に驚いたことがある。

 

昨年の1月5日に催された自動車5団体の賀詞交歓会での挨拶だ。(下に掲載)

 

要約すると、

 

・ 自動車産業は、日本でも海外でも基幹産業

・ 海外では、国や地域に貢献していることを感謝してくれている

・ 今の日本にはそれがない

・ ありがとうの言葉は、ほとんど聞こえてこない

 

 

” 俺たちに、もっと感謝しろ ” って

 

色々言ってはいるが、言いたいことはそういうことかな …

 

 

トヨタ、トヨタ自動車を中核としてグループの連結決算で30兆円を大きく超える、まぎれもない日本一の企業グループだ。

 

豊田章男氏は、そのグループの総帥。

 

だからといって、この発言はあまりに不遜、傲慢。

いかに身内の業界団体の催しとはいえ酷すぎる。

 

こうしたトップ達の意識こそが不正を招いた根源ではないのか …

 

 

日本の『 ものづくり 』の最前線で横行・拡大する不正の数々…。

いま改めて、そのあり方が問われてる。

 

 

ちなみに、豊田会長のいう「 共感 」。

この言葉の同音異義語に、「 狂簡 」という言葉がある。

 

その意味は、" 志望が高く、細事をかえりみないこと、行為が粗雑であること ”。

言い得て妙だ。

 

 

 

「 ー  ふと想起される言葉  vol. 2  ー はこちら>

 

 

 

ー  自工会・豊田会長あいさつ  ー <令和5年1月5日 自動車5団体 賀詞交歓会>

 

昨年、米国、欧州、アジアを訪問する機会がありました。行く先々で感じたことは、「感謝」と「期待」です。

 

どこの国でも、自動車は基幹産業です。

ただ、海外では、日本の自動車産業が現地に根付き、その国や地域の成長に貢献することを「当たり前のことではない」と感じていただいているように思いました。

 

だからこそ、私たちの存在に感謝し、期待をしてくださる。

そして、それこそが、「誰かの役に立ちたい」、「より良い未来をつくりたい」という私たちの原動力になっていると思いました。

 

これが今の日本にはなくなってきたと感じております。

 

毎年恒例ですが、年が明けると、春闘の話題が盛り上がってまいります。

賃上げの議論では、「単年」の「ベア」ばかりが注目されてまいりますが、本来注目されるべきは、地道に続けている分配の実績だと思っております。

 

この10年以上、私たちは全産業平均を上回る 2.2%の賃上げを続けております。

雇用を維持するだけではなく、コロナ禍の2年間、22万人の雇用を増やしております。平均年収を500万円と仮定すると、1兆1000億円のお金を家計に回した計算になります。

 

ただ、ここ日本では、そんな私たちに対して、「ありがとう」という言葉が聞こえてくることは、ほとんどありません。

 

「当たり前」のことに感謝しあい、頑張っている人をたたえ、応援する。

「今日よりも明日を良くする」ために、みんなで必死に働く。その結果、成長し、分配して、「中間層」を増やすことで、私たちは豊かになってまいりました。

 

日本は、この強みを忘れてしまったのでしょうか?

忘れたなら、思い出せばいい。私はそう思います。

 

カーボンニュートラルをはじめ、今の私たちが直面する課題は、産業を挙げて、国を挙げて、みんなで一緒に取り組まなければなりません。今まで以上に、「共感」が大事になってまいります。

 

「共感」という言葉は、「共に」「感謝」すると書きます。「ありがとう」と言い合える関係から生まれてくる「未来への活力」。それが「共感」だと思っております。

 

 

* 日本自動車工業会(自工会)、日本自動車部品工業会(部工会)、日本自動車車体工業会(車工会)、日本自動車機械器具工業会(自機工)、日本自動車販売協会連合会(自販連)