先頃、厚生労働省が発表した人口動態統計によると、今年1~10月に生まれた赤ちゃんの数が、速報値で前年同期比4.8%減となり、年間出生数の概数が、統計を取り始めた1899年以降、初めて80万人を割り込む見通しだという。
これに先立つ12月10日、岸田総理は、出産した人に公的医療保険から支給する出産育児一時金を現行の42万円から50万円に引き上げると発表した。
違うんですよね …
少子化問題の本質はそこじゃない。
知人の話だ。
ある自治体の首長が職を退き、民間企業のトップに就任した。
極めて明晰、卓越した見識と経験・人脈をもって各種の事業を再構築するなど手腕を発揮したが、意外な事柄にも取組んだという。
" 少子化対策の一方策として出会いの場を作るべし "
所謂『 婚活パーティー 』だ。
で、社内・関係会社の未婚の社員に呼びかけ、交流会を実施したという。
これまた、何か違うんだよな …
政府が進める『 少子化社会対策大綱 』に倣ったものだと思うが、安定した雇用と収入のある優良企業の社員さん方ならば、結婚・出産を案ずることはない。
放っといたって大丈夫だ。
何故、そっちに行っちゃうのかな …
『 国富論 』で知られるアダム・スミス。
昨今の強欲資本主義者たちが、アダム・スミスの「神の見えざる手」という言葉を口にしてきたことから、国富論は大きく誤解されている。
国富論は、国民全体を豊かにするにはどうしたらよいかという主旨で書かれていて、富の独占を厳しく糾弾している。
そして国富論には、労働者に対する理解と共感、憐憫の情がその根底に流れている。
ー 労働者には必ず、 家族を養えるだけの賃金を ー
経営者は労働者の賃金を決めるにあたって有利な立場にある。しかし経営者は、労働者が家族を養える以上の賃金は必ず払わなくてはならない。─ 国富論 第1篇 第8章
ー 下層の人々が豊かになることが「社会にとっての最善」 ー
下層の人々は、社会の大部分を占めている。社会の大部分の人々が豊かになることは、社会全体の 隆盛と幸福のために欠かせないことである。そして、それは社会にとって公正なことでもある。─ 国富論 第1篇 第8章
ー 労働賃金の上昇が、人々を勤勉にさせ、人口を増加させる ー
労働の報酬が豊かになれば、子どもの成育条件が改善され、人口は増える。そして、庶民の働く意欲が増進し、勤勉な人が増える。 ─ 国富論 第1篇 第8章
令和4年度の最低賃金全国加重平均は961円。
これでは1日8時間、月に20日働いても15万円程度しかもらえない。
税金や社会保険料を引かれれば、手取りで10万円に届くか届かどうかというところだ。
政府が発表した一人暮らしの平均家賃は5万円ほど。
家賃を引けば、手元には5万円程しか残らない。
光熱費や携帯電話代を払えば、残るのは1~2万円。
生きていくのが精一杯。結婚・出産なんてとてもとても …
最低賃金ではなく、平均的な会社に勤務しているサラリーマンも状況はかなり悪い。
サラリーマンと一言でくくるのは、業種別、職種別での差も甚だしいので少し乱暴だが、正規社員の年収中央値は高くても400万円代半ば。
税金と社会保険料を引かれれば、3百数十万円、手取りで月30万円あれば、多い方ほうだ。
国富論で言うところの ” 妻と子ども二人" を養うのは、かなり厳しい状態だといえる。主婦あるいは主夫にしろ、これでは働き手が一人の場合、家族を養うことなどままならない。
近年、日本の企業は少なからず非常に儲かっていたにもかかわらず、「 国際競争力のため 」と称して内部留保に励み、一方、労働者の賃金は低いレベルに抑えてきた。
そして、政府もまた、国民の賃金レベルが低いことを容認・放置し、法律で定められる最低賃金も抑えたままだった。
その結果、 少子化は加速し、国の存亡さえ危うくなっているのだ。
出産育児一時金の増額 … 産むは易し、育てるは難し … まさに愚策だ。
とは言え、そうした政権与党を長らく容認してきたのも我々国民だ。
これから先、経済規模の縮小と国民生活の低下、格差の固定化と再生産、国際的地位の低下 … etc.
高見から、持てる者が持たざるゆでガエルたちを見下ろす社会。
日本の未来は ……
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